不動産担保ローン関連用語

短期賃貸借保護制度の廃止

改正前の民法395条に定められていた短期賃貸借保護制度が法改正により廃止されたこと。その代わりとして、建物明渡猶予制度が創設されている。

《1》短期賃貸借保護制度とは
抵当権が設定された不動産において、抵当権が登記された後に賃借権が設定された場合であっても、その賃借権が短期賃借権であるならば、その賃借権は抵当権に対抗できるという制度のこと。
(ただし、この短期賃貸借保護制度は平成16年3月31日をもって原則的に廃止されたことに注意)
1)短期賃貸借保護制度の趣旨
民法602条に定める短期賃貸借とは、土地は5年以内、建物は3年以内の賃貸借を指している。ある不動産に抵当権が設定された場合、抵当権設定登記がなされた後に設定された賃貸借は、本来ならばすべて抵当権に劣後するのが原則である。
従って本来は、融資返済不能などの事情によって抵当権が実行された(すなわち抵当不動産が競売された)場合には、抵当不動産の賃借権者はその賃借権を抵当権者に主張することができないはずであり、抵当不動産の競落後には当該不動産を明け渡さなければならないのが原則である。しかしこれでは、抵当権設定後の当該不動産の賃借利用を事実上阻害してしまう恐れがあるとの配慮から、期間が短い賃貸借に限って、例外的に抵当権に対抗できる(すなわち、たとえ競売されたとしても当該短期賃貸借の期間中、賃借人は当該不動産を明け渡さなくてよい)こととされた。これが「短期賃貸借保護制度」である。短期賃貸借保護制度は改正前の民法395条に規定されていた。
2)短期賃貸借保護制度の具体的適用
短期賃貸借保護制度の適用にあたっては、具体的にどのような賃貸借が「民法395条で保護されるべき賃貸借に該当するのか」が問題となる。
判例によれば、競売のための差押えの登記がなされた時点において、賃借権の残存期間(継続的な賃貸借契約の場合は次の更新時期までの残存期間)が民法602条の短期賃貸借の範囲内であるか否かにより判断することとされている。
例えば、平成15年2月1日にある賃貸マンションに競売のための差押登記がなされた場合に、その賃貸マンションの賃貸借契約の更新時期が平成15年12月31日であるとすれば、この賃貸借の残存期間は11ヵ月であるので、短期賃貸借に該当し、民法395条により保護されることとなる。
ただし、更新時期到来時にはこの賃貸借契約を更新することができないので、賃借人は平成16年1月1日以降はこのマンションを賃借することはできず、明け渡さなければならない。
3)短期賃貸借制度の廃止
このように、賃借権保護等のために一定の役割を果たした短期賃貸借保護制度であったが、平成15年8月1日に公布された「担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律」により、平成16年3月31日以降原則的に廃止された。
《2》短期賃貸借保護制度の廃止の背景・経緯
短期賃貸借保護制度は、抵当権設定後の抵当不動産の賃借利用を一定限度で保障する制度であったが、依然として占有屋等による競売執行妨害にこの制度が濫用されるという弊害があった。
また、賃貸借契約の更新時期と競売のための差押え登記の期日とが近接しているかどうかという偶然の事情により、賃借人が賃借を継続できる期間に著しい格差が生じるという問題点もあった。
そこで、平成15年8月1日に公布された「担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律」により、平成16年3月31日以降、短期賃貸借保護制度は廃止され、その代わりに建物明渡猶予制度が創設されている。
《3》短期賃貸借保護制度の廃止に伴う経過措置
「担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律」の施行日(平成16年4月1日)より以前に抵当不動産に設定された賃貸借については、依然として短期賃貸借保護制度が適用される(同法附則第5条)。
《4》建物明渡猶予制度の創設
建物明渡猶予制度とは、抵当権に対抗することができない賃借権について、抵当権の実行による競売がなされた場合に、賃借人は競落人の買受の日から6ヵ月間に限り、当該不動産を明け渡さなくてよいという制度のことである(改正後の民法395条による)。