不動産担保ローン関連用語

更新料支払い特約(建物賃貸借契約)

「権利金」でもなく、「敷金」でもない「更新料」という名目の金銭授受は、一体どのような性質をもつかについては、

  1. @ 期間満了時に貸主が異議権(正当事由に基づく)を行使することを放棄することの対価だという説、
  2. A 更新前に借主が保有していた賃借権の価格と更新後に保有する完全な賃借権の価格に差であるとする説、
  3. B 紛争を起こさないことにより節約できた裁判の費用とする説、
  4. C 訴訟を差し控え譲歩したことに対する一種の慰謝料的な性質をもつという説、
  5. D 直裁に地代家賃の後払いに他ならぬという説、

など多種多様に解釈されています。ところが一方で、借地借家法では契約更新にあたっては、貸主に正当な事由のない限り、借主に何らの金銭的負担をかけることなく、契約を更新しなければならないということを建前としています。実際には、借地、借家を問わず、更新時期に何がしかの更新料の授受があることは半ば慣行化されているのが実情です。著しく不合理な内容でない限り、更新料特約は有効であるというのが現時の判例通説の考え方です。また、合意による更新を除き、話し合いがつかないで法定更新がされた場合においては、賃貸人は更新料を請求する権利がないとするのがわが国の裁判所(最高裁昭和51年10月1日第二小法廷判決)の立場です。それでは、更新料の支払いの約束があるのに、その約束を守らない場合はどうでしょう。賃貸人は、有効な更新料支払い約束に基づいて更新料支払いの履行を求めることも、不履行の場合はその更新契約を解除することも可能です。もっとも、更新契約を解除しても、それは合意による更新契約がなくなるということで、当然には賃貸借契約が消滅するわけではありません。では、更新料支払いの約束を履行しないということを理由にして、賃貸借契約自体を解除できるでしょうか。昭和45年に言い渡された東京高裁の判決は、更新料支払いの契約と賃貸借契約は一応別個の契約であり、約束された更新料を支払わないことが直ちに賃貸借契約そのものの契約違反とはいえないとしています。すなわち賃貸借契約自体を解除することはできないと判決しています。結論的にはこの判決の事例に関する限り妥当だと思われます。ただし、更新料不払いという一事だけで解除権が認められないとしても、賃貸借契約をめぐる一切の事情を併せ考えた場合に賃借人としての信頼関係を著しく破壊する行為と認められるときは、賃貸借契約自体の解除もあり得るし、その旨の最高裁判決もあります(同趣旨、最高裁昭和59年4月20日判決)。

参考:最高裁判所昭和59年4月20日判決
土地の賃貸借契約の存続期間の満了にあたり賃借人が賃貸人に対し更新料を支払う例が少なくないが、その更新料がいかなる性格のものであるか及びその不払が当該賃貸借契約の解除原因となりうるかどうかは、単にその更新料の支払がなくても法定更新がされたかどうかという事情のみならず、当該賃貸借成立後の当事者双方の事情、当該更新料の支払の合意が成立するに至つた経緯その他諸般の事情を総合考量したうえ、具体的事実関係に即して判断されるべきものと解するのが相当であるところ、原審の確定した前記事実関係によれば、本件更新料の支払は、賃料の支払と同様、更新後の本件賃貸借契約の重要な要素として組み込まれ、その賃貸借契約の当事者の信頼関係を維持する基盤をなしているものというべきであるから、その不払は、右基盤を失わせる著しい背信行為として本件賃貸借契約それ自体の解除原因となりうるものと解するのが相当である。